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収穫はそれだけではなかった。
人間の習性として、どうやら毎朝いらなくなったものを袋に入れて外に出すようだ。
俺たちとは違う、長くとがった口を持つ生き物がそれを教えてくれた。
そいつらが食わないという魚のかけらを俺はアジトに持ち帰った。
アジトに帰ると、いつもの場所でギンが眠っていた。足音を聞いたのかピクッと両方の耳が動く。
『ギンさん、これ…この間のお礼なんだ。受け取ってくれるかい?』
そう言って、持ち帰った魚のかけらをギンの前にそっと置いた。
『おう、気を遣わせちまってすまねぇな。』
ギンはニカッと笑って、俺の頭をポンと叩いた。
俺は褒められたような気がして、
何だかすごく嬉しかった。
俺のそんな心の高揚が、ふと気になっていたことを口走らせた。
『ねぇ、ギンさんはいつもこの場所で寝ているけど、出かけたりしないのかい?』
俺の問いかけに、ギンは答えぬままそっと目を閉じた。
聞いてはいけないことだったのだろうか?
さっきまでの高揚とは裏腹に、重苦しい雰囲気が流れた。
『俺のせいなんだ。』
後ろからJがそうつぶやきながらアジトに入ってきた。
Jの眼には涙が溢れていた。
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