~旅立ち~

3/4
前へ
/70ページ
次へ
自分の生を感じた瞬間、 ひどく喉が渇いた。 冷たくなってしまった兄弟の体に前足を置き、箱の外に出る。 暗い。 明かりらしき物が何も無い路地。 こんなところに俺たちのような黒猫を捨てれば、それは誰の眼にもつかないだろう。 俺たちを捨てた者は嫌味なくらい賢いに違いない。 しばらく歩くと路地から広い通りに出ることができた。 街の明るい光が開いている俺の右目を刺激する。 思ったほど肌寒くはない。 初めて眼にする大きな二本の足で歩く者たちも、 肌を露出した格好をしている。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加