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路地と広い通りの狭間まで歩いたところで、
ピタリと歩みを止める大きな者が視界に入った。
『うわ、黒猫だ!あっち行け!』
いきなり振り上げられる大きな足に驚き、俺は来た道を必死に走っていた。
どうやらこの持って生まれた毛の色は大きな者たちには忌み嫌われるらしい。
また箱のある場所まで引き返してきた。
よく見ると、箱のすぐ近くにほんの少しだけ水が入った皿が置かれていた。
この世に俺たちを哀れんだ者がどうやらいたようだ…。
俺はその水を口に含みゆっくり飲みほした。
喉が潤い、足に力がみなぎるのがわかった。
俺はもう一度水を口に含み、今度は冷たくなってしまった兄弟に少しずつかけてやった。
今の俺にできる、せめてものはなむけのつもりだった。
二匹に背を向け、俺はまた歩きだした。
あてもなく…ただただその場所から逃げるように…。
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