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『お前、見ない顔だな。
捨て子か?』
茶色の猫はこちらの意を汲まずに単刀直入に聞いた。
『あぁ、よくはわからないけど多分そうだと思う。』
茶色の猫は俺の全身に眼をやり、
一つため息をついた。
『その様子だと…名前なんか持っちゃいないか。』
名前?あぁ、自分の呼び方のことか。そんなものはあいにく持ち合わせちゃいない。
『俺はJ。額に傷があるだろ?その形が人間たちにはJという読み方ができるらしい。』
人間?人間って何だ?
これから生きていく上で、俺は知らないことがあまりにも多い。
一つも世の中の知識を持たない俺が生き抜くためには願ってもいない存在が見つかったのかもしれない。
俺はこのJからできるだけ知識をもらおう、そう思った。
『お前の名…ハル、うん、ハルだな。今はちょうど春の季節、そんな毛色とは似つかわしくないかもしれんがどうだ?』
正直名前などどうでもよいと思ったが、俺は言われるがまま今日からハルと名乗ることになった。
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