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「何か言いたい事でも?」
「いや、寂しかったなんて今まで言われた事なかったから嬉しくてさ」
翔太郎が口角をあげる。
「寂しい?僕が?」
「違ったか?」
「分からない。ただ翔太郎がいなくて心がスカスカした。君と一緒にいるのが当たり前になりすぎて、1人の過ごし方を忘れただけだ」
「お前…よくそんな事平然とした顔で言い切れるな~…」
翔太郎がすっと立ち上がり、救急箱を返しに行った。
翔太郎の耳が何故か真っ赤になっていた。
「狭い…」
「まぁまぁたまにはいいだろ暖かいし」
夜ご飯も風呂も済ませ、事務所のベットに寝転んでいたら、翔太郎も入ってきた。
「やっぱり風呂あがりのフィリップは暖かくていいな」
「誰だって風呂上がりは暖かい」
翔太郎はぎゅうっと僕を正面から抱きしめる。
するとどこから鐘の音が聞こえてきた。
若菜姫姫のラジオで言っていた。
12時までに寺で人間の持っている108の悩みを除去する意を込め、108回鐘をつくのだと。
「翔太郎」
「除夜の鐘が聞こえるな」
「うん」
「次目開けたらもう新しい年だな」
「翔太郎」
「うん?」
「お休み」
「ああ、お休み」
「翔太郎」
「ん?」
「次に僕が目を開けた時、一番に映る物が君であって、感じる温もりがある事をお願いするよ」
「…だからそう言う事を突然言うなって」
翔太郎の胸の中にいたせいで顔は見えなかったが、急に早まった心臓の音が面白くて少し笑みがこぼれた。
そしてそのまま静かに目を閉じた。
END
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