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「翔太郎」
「何だフィリップ」
「『初詣』に行ってみたい」
「…………だめ」
「……………」
つべこべ言わず連れて行けと言わんばかりにフィリップが俺を睨み付ける。
俺はその視線に気がつきながらも知らない振りをしてコーヒーを飲んだ。
どんなに睨み付けられようが、喚かれようが、こいつを外に連れ出す訳には行かない。
フィリップは組織に狙われている
組織は大きいのは分かっているがどれくらいの人数がいるのか検討も付かないし、どこの誰が敵かもわからない。
だからあまり人前に連れて行きたくないのだ。
俺が一緒にいたって、もし変身して闘うとなればあいつの体は無防備になる。
それに奴にとって外は新しい検索対象の宝庫だ。
そんな所に連れて行ったらどうなるかなど言うまでもない。
だから可哀想だとは思うが連れてってやれないのが俺の見解。
でも当の狙われの姫は俺の気も知らずに睨み続けている。
「フィリップ~…そんな顔すんなって…」
「だったら連れ」
「だ~め~だ。お前は組織から狙われているのを忘れたか?」
「分かっている。けど…」
むうっと唇を尖らせてフィリップは地下に行ってしまった。
ああ拗ねてしまうとしばらくはこもりっきりになってしまう。
せっかくの正月なのにフィリップとべつべつの部屋で過ごすのは残念だが、大人しくしてくれるならそれも仕方ない。
あいつは親っさんから預かった大事な相棒であり、何よりも失いたくない大切な相手だから。
もし闘う事がなくなってもうWにならなくても、ずっとずっと一緒にいたいと初めてそう思えた相手だから。
だからこそ自他共に認める過保護になってしまうのだ。
とは言ってもこんな事はフィリップには直接言えないし、言った所であいつはキョトンとするだけだろう。
けれど俺がいつも思っている事だ。
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