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「さて…そろそろフィリップの機嫌を取りに行きますか」
外がすっかり暗くなったと言うのに案の定フィリップは部屋から出てこなかった。
地下の部屋に行くとフィリップはソファーにうつ伏せのような形で寝転んで本を読んでいた。
「フィリップ」
「連れて行ってくれる気になったかい?翔太郎」
「馬鹿言え」
「そうかい…」
一切こっちを見ようとしないフィリップに苦笑いをこぼし、ソファーの背もたれに腰掛けた。
「初詣の言葉は若菜姫のラジオで聞いたのか?」
「ああ。でも全てを閲覧し終えた」
「…ん?なんで閲覧し終えたのに初詣に行きたいんだ?」
「……………」
フィリップは頭ポリポリっとかいてから体をゆっくりと起こし、くりっとした愛らしい目で上目使い気味にじっと俺の顔を見つめた。
実はこの顔にかなり弱かったりする。
「フィリップ?」
フィリップはソファーの右側に座り、空いているスペースをポンポンっと叩いた。
俺は招かれるままそこに座った。
「神さまと言うのはそもそも優れた人の事をさす言葉らしい。だからそんな人に願い事をしても本当になるとは別に思ってはいないが、僕も願い事があったんだ」
「フィリップの…願い事…?」
そんな物があったなんてまさに寝耳に水。
まあこいつも人間だし欲求はあるだろうが、改めて言葉にしたのは初めてで正直驚いた。
「何だよ願い事って」
「うん。君と…例えドーパントがいなくなって…Wの存在がいらなくなっても、ずっと…」
語尾の歯切れが悪くなると同時にフィリップはそのまま俯いてしまった。
顔を覗こうとフィリップに少し近づいた時、俺の右手がぎゅっと握られた。
握られたフィリップ手が微かに震えている。
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