静かな部屋とコーヒーと君の寝顔

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  昼の柔らかい日差しが入り込み、時折ベットに寝転がって本を読んでいるフィリップのページを捲る音がやけに大きく聞こえる鳴海探偵事務所。 いつものドタバタがうそのように静かな空間。 食後に淹れたコーヒーのいい香りが漂って何とも気持ちのいい昼下がり。 依頼者も事件もなく、実家に帰っていない亜樹子。 この条件が揃うだけで日々はこんなにも静かになるとは、誰が予測できただろうか。 くいっとコーヒーを一口飲むと、程よい苦味がハードボイルドな俺の心に染み渡る。 「眠い…」 フィリップが小さく呟く。 目線をベットの方に移すと、くぁっと欠伸をしてから読んでいた本を枕元におき、フィリップは小さく丸まった。 「翔太郎」 「なんだ」 「何かあったら起こしてくれ…」 「おう」 じゃあ、と一言呟いたと思うとあっと言う間にスースーと寝息が聞こえてきた。  
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