呪いの呪文

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 学園都市を見渡すことができる丘。  生い茂る草の上に、一人の少女が寝転んでいた。周りには、少女以外誰もいない。  サラサラと手触りの良さそうな金の長髪を草の上に広げ、空色の瞳が眠そうに瞳と同じ色の空を見上げている。  長い睫毛が白い真珠のような頬に影を落とし、桜色の唇がうっすらと開いていた。  柔らかに吹く風が時折、少女の纏う真っ白なローブに桜の花びらを落とす。淡い色の花びらは白いローブを優しく色どった。  そのローブは学園都市光の都の見習い魔術師だけが身にまとうことができるものだ。  左胸の上には銀でできた菱形の徽章がとめられており、そこには『ショコラ・パフェ』と、ミミズのような文字が踊っている。  字が下手という訳ではなく、そういう文字らしい。  まぁ、それはそうと、『ショコラ・パフェ』というのが少女の名前のようだ。  その徽章は学園都市の魔術師、または魔術師見習いであることを証明するものであり、魔術師であるならば、そこには名前と共にランクが刻まれる。だが、彼女――ショコラのものには刻まれていない。  それもまた、見習いである証拠だ。 「お腹減った…」  ぐきゅるるるるるる~。  虚ろな声の後、大きな音が響いた。  うっ。と、小さく呻いてショコラはお腹を押さえる。 (お腹減った。こんなにお腹が減ったのは、何年ぶりだっけ?)  指を折り折り考える。  1、2、3、4―― 「8年ぶり?うーん、そんなもんだっけ…」  一人ポツリと呟いた。  当然ながらそれに応えるものはいない。 (………どうしよう?お腹減って動けない)  このまま野垂れ死んだら、間抜けだ。他人事のように考えて、何故自分がここにいるのかを思い返す。  その時だった――image=367047317.jpg
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