呪いの呪文

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「こんな所にいたのか…」 「?」  突然、若い男の声がした。  ショコラは思わず眉を寄せて、声のした方へ頭を動かす。  そこには背の高い、無表情な男が立っていた。少し長めのクセのある黒髪。 (カッコイイ人だな~。モテそう)  そう思ったショコラは、男の瞳を見て目を見開いた。  黒い。ひたすら黒い。吸い込まれてしまいそうな漆黒の美しい瞳だ。  その瞳から目を離すことができず、彼女は固まった。 「ショコラ・パフェ、16才だな?」  男は、ショコラの名前を口にした瞬間、何故か嫌そうに顔をしかめる。  その男の表情をじっくり眺めた後、ショコラはハッ。と、我に返った。  よく見れば、男が身にまとっているのは、ショコラと色違いの黒いローブだ。  それはつまり、男が魔術師であるということ。  さらにローブの左胸あたりを見て、ギョッと目を見開いた。  菱形の徽章には、『ハンセ・クーリッジ』という名前。そして、そのランクは―――『SS(ダブルエス)』。 (嘘!?一体、この人はいくつだろう?)  魔術師のランクは下から 『J(ジャック)』18~20代 『K(キング)』20~30代 『S(エス)』30~40代 『SS(ダブルエス)』40代~50代 『SSS(トリプルエス)』50~60代 『∞(ループ)』各学園の学園長 と、なっている。  つまり、『SS』ランクは50代の者がほとんどだ。若くても40代。  ショコラは遠慮無しに男をジロジロと眺める。 (どう見ても20代。まさか、童顔?) 「俺はハンセ・クーリッジ。23才だ、童顔ではない」  思考を詠まれていたらしい。  うっ。と、彼女は声を詰まらせた。 「今日からお前の指導教官を務めることになった」  指導教官。つまり、先生。  その単語にショコラは重大なことを思い出す。  今日は―――
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