呪いの呪文

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「あぁっ!!移行式が!?」  移行式というのは、魔術師見習い達が基本学課を終え、専門学課へと移行するための儀式。  まぁ、卒業式と入学式を同時に行うようなものである。 「そうだ。お前の姿が見えないから、わざわざ探してやった。感謝しろ」  無表情で淡々と告げられる。 (なんだか偉そうな先生。否、実際悪いのは私だし、感謝しないといけないのは、本当だけど…。いや否、それより問題なのは―――)  指導教官ハンセを見上げ、ショコラは眉をしかめた。 (無表情がもったいない!!せっかく整った顔をしているのに)  心の中で嘆いていると、ハンセが首を傾げる。 (あ、ちょっと可愛い!!)  その仕草を見逃さなかったショコラは、キラキラと瞳を輝かせた。 「いつまでそこで横になっているつもりだ?」  ぐきゅるるるるるる~。 「……」  思い出したようになったショコラのお腹の音に、ハンセが眉を寄せる。  ショコラはそんなハンセに、ニッコリと日溜まりのような笑顔を向けた。 「先生、助けて下さい」 「?」 「お腹が減って死にそうです」
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