呪いの呪文

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 学園都市光の都。  ここは、魔術師達の学舎だけでなく、一般の人が住む生活居住区が存在する。学園の魔術師達もよくそこで食事をする。  その中でも、一番安くて美味しいと評判の『どんぐり亭』にショコラとハンセはいた。  昼前とはいえ、そこは一般の人々や魔術師でテーブルが埋まってしまっている。  そして、そんな中。ショコラ達は注目を浴びていた。  店の奥に置かれた、大きな一つの木のテーブルに二人は座っている。座っているのは、二人だけ。  だが、そのテーブルには皿の山がいくつも出来ていた。  ハンセはその皿の山を見上げ眉をしかめ、続いて次々とその皿の山を作っていくショコラを見る。  今、ショコラはハンバーグを食べていた。  美味しそうに食べるショコラの口の中へ、ハンバーグはあっという間に姿を消す。 (ブラックホールのようだ。一体こいつの胃はどうなっているのだろう?)  ハンセは無言でその様子を見ていたが、ついに口を開く。 「お前、どれだけ食う気だ?」 「ほひ?」  エビフライをくわえていたショコラはモグモグと口を動かして、ゴクンとエビフライを飲み込んだ。 「あぁ、そうですよね。もうそろそろやめとかないと、先生のお財布が危ないですよね」 「何で俺の財布が危ないんだ?」 「え?だって私、お金持ってないし」 「―――…」  ハンセは絶句する。  何か言いたかったが、あまりのことに何も思い浮かばない。 (何だこいつは?!その、何だ?!)  頭の中は混乱しているが、端から見ればただの無表情。誰も彼が混乱しているとは思いもしないだろう。  そんなハンセを空色の瞳で見つめ、ショコラはニコリと笑った。 「冗談ですよ、先生。ちゃんと持ってますって!!」 「……」
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