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「いやだなぁ、そんな目で見ないで下さいよ!!照れるじゃないですか」
ジトーッ。とした目で見つめてくるハンセにショコラはわざとらしく照れてみせる。
そして、横を通りすぎようとした店員を呼び止めた。
「すみません」
「はい」
まだ若い少年だ。ショコラとそう変わらないくらい。
ニッコリと笑ったショコラの日溜まりのような笑顔を見て、少年が頬を紅く染める。
頬を染めた少年へ、ショコラはその笑顔のまま告げた。
「デザート、全部お願いします」
「はいっ!!――え?全部ですか?」
頷いた後、少年は思わず問い返した。
「はい、全部」
ショコラの笑顔に圧倒されたのか、それともテーブルに山と積まれた皿を見て納得したのか、少年はかしこまりましたと言って去って行く。
その後ろ姿を見送って、ショコラはハンセに向き直った。
ハンセの顔は何故か青ざめている。そして、嫌そうな顔をしている。
それにショコラは首を傾げた。
「先生、どうかしたんですか?」
「…俺は甘い物が嫌いだ」
「はぁ、そうですか」
「匂いをかぐのも嫌だし、目の前にそんな物が並んでいたら、気絶する」
(え?そこまで?)
ショコラは目を丸くする。
「名前を口にすることさえ嫌だ」
その言葉にショコラはあることに気づく。
ハンセは一番最初にショコラの名前を呼んだ時、嫌そうな顔をした。
そして、それから一度もショコラの名前を呼んでいない。
(何でだろうとは思ったけれど。なんだ、そういう理由かぁ…)
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