彩恋花-サイレンカ-

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──春。 校門前にある桜の樹は、満開の花を付けて誇らしげに立っている。 ボクはそれを見上げて少し微笑んだ。 ボクの名前は千石 彩未(センゴク アミ)。 自分のことを『ボク』と呼ぶのだけれど、れっきとした『女』だ。 今日から高校2年だからもう胸は……す、少しはあるし、何より見目は完全に少女である……はず。 肩まで伸びた真っ直ぐな黒髪に、この学校名物の可愛いフリフリが付いたチェック柄の短いスカート。 ──どうだ、信じて頂けただろうか? ……なんて、自分でも理解に苦しむ謎の自己紹介をしてみる。 そしてボクは、樹を見上げるのを止め、いつものように校舎へと足を進めた。
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