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バタン――
「ちょっと、ちゃんと歩いてよオ。」
「えー…。もう俺ダメ~。」
あの人の声がする。酔ってるみたいだ。あの人と女性の声。また違う女性の声が。
あの人は僕に愛してると言ってくれた。優しい声で言ってくれた。
その声で女性にも愛を囁く。
「誰かいるの?」
「んー…、大丈夫。別の部屋で寝てるから。そんなことより早く行こう?」
甘えた声。もう随分聞いていない声。
零れる涙を止められない。
どうして僕がいるのに、女の人とセックスするの?
僕とはしてくれないのに。
どうして僕がいるのに、毎晩違う女の人に愛を囁くの?
僕には、ずっと前から言わなくなったのに。
どうして?
どうして?
どうして?
憎くて、悔しくて、殺してやりたいほどなのに。
僕はあの人を愛することを止められない。
END
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