彼女の愛読書

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「……一体、誰がこんな台詞を言うんだか」  呆れ半分でページをめくっていくと、どうやら生徒と教師の禁断の恋がメインの話らしいことは読み取れる。タイトルはずばり『禁断恋愛☆放課後の恋人』。 ……一瞬、この本の持ち主の頭を化学の教科書で殴りたくなった。 「……」  素晴らしいほどの呑気さ、能天気さ加減に、比喩でなく頭が痛い。  深い深い溜息をつきながら、佐伯先生は詩織の忘れ物である少女小説を机に置いた。 ……彼女は最近、たびたび化学準備室に来ては、長々と居座っている。『意外と居心地良いんですよね』と、まるで自分の部屋のようにくつろいでいるのは、いかがなものか。
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