彼女の愛読書

4/8
前へ
/92ページ
次へ
「……まあ、言っても無駄だろうけどね……」  無駄なことは嫌いな佐伯先生。当然、言っても聞かないことは百も承知な相手に言い聞かせる気はさらさら無かった。  やれやれと首を振り、本を閉じて机の上に置こうとしたところで、やけにタイミングよくドアが開く。 「先生っ!私、本ここに忘れてませんか!?」 ……いきなり飛び込んで来た例の女子生徒。いい加減、ノックぐらい覚えろ、とは思うものの、言っても無駄なのはまた自明のこと。 「……これのこと?」  机に置きかけた本を詩織に見せるように上げると、何故か彼女の顔が凍り付く。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加