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「……せ、先生の人で無しーっ!鬼っ!悪魔っ!」
「毎回思うけど、君って罵倒文句の語彙が呆れるくらい少ないね」
「じゃあ…………先生のムッツリ」
「…………だからって、どうしてそういう突飛なことを言い出すのかな、君は。……僕を『ムッツリ』呼ばわりするだけの根拠は『当然』あるんだろうね?」
「茜が言ってました。佐伯先生みたいな人は表に出ない分裏で結構色々……」
「……『色々』……何だって?」
「…………そんな怖い笑顔で睨まなくても、別に私先生がアダルトな本やビデオ持ってても気にしませんよ?そこまで夢見てないです」
「……そんな疑いをかけられるくらいなら、僕の部屋を隅から隅まで探して頂いて結構」
「…………あ、そっか。『顔だけ』は良いから女性に不自由したりしませんよね。そんなもん要らないってことかー」
納得、とうんうん頷く詩織に、佐伯先生はにこやかに笑った。
「……君はそんなに僕を怒らせたいのか?」
「い、あの、これはちょっとした冗談で……」
「……そう、『冗談』か……面白い『冗談』だね?」
「って、目が全然笑ってないじゃないですか!?」
――その後、どす黒い冷気の漂う化学室には、誰も近付けなかったとか。
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