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「……先生が優しいのは、逆に怪しいです」
「おやおや、君は優しくない僕の方が好み?」
あくまで余裕の笑顔を崩さない佐伯先生に、詩織もにっこり笑った。
「私は……正直なそのままの先生が好きですよ。……だから、ごまかさないで下さい」
……最後の手段、上目遣いと真剣な口調。茜が『男はそういうのに弱いの!』と教えてくれたが、どの程度効くのかは未知数だ。
「……それは心外だね。僕が君に対して正直で無かったことなんて、あるはずがないじゃないか」
どの口がそんなこと言ってるんだ、と思いながらも、詩織はかつて聞いたことがないほど甘い声と、まるで口説き文句みたいに聞こえる言葉に抗えなかった。
……完敗だ。
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