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負けを悟った詩織は、ちょうどいい温度になった紅茶に口をつけた。おそらく佐伯先生が自分で選んでいるのだろう、豊かな香りに上品で深みのある味は、いかにも先生の好みだ。
紅茶を飲みながら、ふと、佐伯先生の机を見ると、期末テストの問題用紙が置かれていた。……テスト。
……そういえば、ここに呼ばれたのは、『補習』のためだったはず。
「……先生」
詩織の顔を見て、佐伯先生は溜息をついた。
「私、今回赤点ありませんでしたよ!!」
「……気付いたか」
「気付いたか、じゃないですよ!……自分が住所教えるの面倒だったからって、私を使って逃げるなんて!」
「逃げるなんて人聞きの悪い。……別によく知りもしない生徒から年賀状もらってもカケラも嬉しくないのに、こちらも返さない訳にはいかないなんて無駄なことをしたくないだけ。資源の無駄遣いもしなくていいし、実に合理的だと思わない?」
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