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咲『…ハル、もしかしてアパート前にいた人って炎夏さんの知り合い…?』
春馬『あぁ…らしいよ…。』
小声でそう言い合い、もう一度炎夏を見るが…怒りを堪えてるのか肩が震えてる。
そして炎夏は不意に立ち上がり、そのまま玄関へ向かおうとする。
咲『えっ、どうしたんですかっ!?』
炎夏『大丈夫、奥歯折ったら終わりにするから。』
いや何の話!?
確実に何らかの暴力手段をとる気ですね!?
炎夏は止まらずそのまま外に出てしまい、俺と咲も慌てて立ち上がり炎夏の後を追う。
で、外に出てアパートの階段を駆け降りて行く炎夏を追い…その時俺はアパート前に確かに仁王立ちしている若い男性を見つけた。
高身長で、スラッとしたスタイル。
間違いなくイケメンに分類される容姿に、天然パーマのモジャった髪。
あれが炎夏のボディーガード?
炎夏はそのままその男性の下まで無言で歩み寄る。
するとその男性も炎夏の存在に気がついたのか、笑顔で振り向き……
男性『炎夏嬢ぉ~~!!用事はもう終わったん──』
炎夏『欝陶しいぃぃぃッ!!』
男性の声と炎夏の咆哮が聞こえたと同時に、炎夏が放った回し蹴りが男性の顔面にクリティカルヒットしていた。
あぁ、痛そう…。
男性は綺麗な放物線を描いた鼻血を噴き出しながら派手に飛ぶ。
なんて芸人な蹴られ方をするんだこの人。
春馬『…これがその護衛の刑事さん?』
地面に転がってる男性を指差すと、炎夏は黙って頷く。
…確かにアホっぽいっちゃアホっぽいっけど…俺らより年上の大人なわけだし…その男性は髪型こそ天然パーマだけど、顔は普通にイケメンに属してる。
男性『痛ってぇなッ──……痛いじゃないですか炎夏嬢!!』
男性は一瞬素になってキレたけどすぐ敬語に。
炎夏『帰れ犬!!犬小屋の中に帰れ!!ハウス!!』
咲『…ハ…ハル…これは…』
男性を罵倒する炎夏を目の当たりにした咲は、かなり混乱したかのように引き攣った表情で俺に状況を尋ねる。
これは、と聞かれても…よく分かる上下関係図としか言いようが…。
男性『だから嬢が何と言おうと俺は…あれ、お前ら誰だ?』
男性は立ち上がり、蹴られた頬を摩りながら俺と咲の顔を交互に見る。
誰と聞かれても、どう答えりゃいいか分からないポジションにいるからな俺…。
咲『えっと…桜庭です…。』
戸惑いながらも咲は名乗る。
いや、戸惑ってるっつーか微妙に引いてる。
炎夏『二人とも私の知り合い。ほら、分かったんなら帰りなよ。』
男性『知り合い?…コイツが?』
と、何故か俺を指差しそう聞く男性。
俺何かしたっけ?
男性は俺を見るなり胡散臭そうな目を向ける。
男性『同性の友達ってのは自由ですけど、流石に異性の友達は選んで決めないとダメですよ。』
春馬『………。』
炎夏はため息を吐き、咲はまだ現状が読み込めず、俺は…とりあえず馬鹿にされてるということは分かったから、イライラ。
すると男性は俺の下まで歩み寄って来る。
男性『君、失礼だけど嬢とはどういう関係?』
春馬『…友達です。』
そう答えると男性は大袈裟にため息を吐き、俺の肩に手を乗せる。
男性『嬢はな、君みたいな地味でアホ面した一般的な男が手を出していい女じゃないんだ。』
炎夏『コイツ、桜井財閥社長の御曹司なんだけど。』
男性の後ろにいた炎夏がそう告げると、男性はしばらく凛々しい表情のまま固まった。
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