お姫様の哀れな下僕

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男性『もも申し訳ございませんでしたぁぁぁぁッ!!!』 めっちゃ素早い動きで両手を地面につけ、男性はそう叫びながら土下座をし出した。 …いや、普通に引くわ。 春馬『いや、別に──』 男性『見た瞬間からオーラが普通とは違うなぁとは感じていたんですぅッ!!』 …あぁ…うん…。 ウザイわこの人。 なるほど、炎夏が言う「刑事ドラマの主人公の相棒の新米刑事みたいな奴」ってのが納得できる。 自分より上の奴にはヘコヘコするけど、自分より下の奴には強気なんだな。 炎夏『ということで帰って。もしくは圧死して。』 男性『いえ、俺は帰りません!!』 炎夏の罵倒を受けてもなおくじけず、男性は土下座体勢のまま炎夏に強い意志を見せる。 春馬『…なぁ、この人なんでこんなにも意志固いんだ…?』 仕事とは言え、本人にここまで言われたら普通誰かに変わってもらいたがるだろ。 そう言うと、男性は目をキリッと逞しくする。 男性『そりゃ嬢の大ファンだからだよ。…です。』 この人絶対に敬語ヘタですよね。 てゆーか、ファン?炎夏の? それを聞いて炎夏は目を細めて白くさせる。 炎夏『気持ち悪っ。アンタ自分が何歳か分かってんの?』 男性『24歳だよ!!…です!言っときますけど、好きなタイプは年上です!!』 いやそこまで聞いてねぇよ。 でもこの感じ、全然ファン感ないんだけど。 俺も炎夏と同じく白い目を向けると、男性は気まずそうに目を逸らす。 炎夏『…で?ホントにファンなの?ちなみに私、嘘つきは嫌いだから。』 春馬『どの口が言って…すんません。』 睨まれたのですぐ謝罪。俺も大概ヘタレである。 そう言われて男性は、慌てて首をブンブン横に振る。 男性『…じ、実は…先日からお付き合いしてる女の子が…炎夏嬢のファンでして…』 罪の告白かのように呟き、それを聞いて俺も炎夏を「はぁ?」と声を漏らす。 男性『俺が炎夏嬢の護衛に選ばれたって聞いたらすっごい喜んでくれて…逆にもしこれクビにでもなったら、振られる気しかしないんですよぉ!』 炎夏『…うわぁ。』 春馬『…うわぁ。』 炎夏とドン引くタイミングがシンクロした瞬間なのだった。 いや、なんて情けない理由なんだ。 男性『しょうがないでしょうが!?俺が今まで女性に振られた回数聞きます!?聞いたらそんな目出来んくなりますよ!?』 春馬『いやもっと凄い目になりそうだから遠慮します。』 彼女に振られたくなくて炎夏の護衛にしがみついてるって、この人どんだけ情けないんだよ。 でもなんかこの情けなさは俺も似たものを感じるからあんま馬鹿には出来んわ。 あんまり話についていけてない咲は目を点にしてるが、この炎夏の本性にはツッコミ無し。 俺はもう一度その男性を見てみる。 男性『…な…なんでしょうか…?』 春馬『あ、いえ別に…。』 この人、天パだけど確実に男前の部類に入るような容姿してるし、別にそこまで嫌な要素は…確かに性格はアレな気もするけど、まだ"ユニーク"って言葉で片付けれるレベルだ。 炎夏『という訳で帰りなよブルドック。』 男性『帰れませんって!!』 いやそれ以前に自分がブルドックと呼ばれていることにはツッコミ無しかよ。 男性は強い意志のようなものが宿った目で炎夏を見るが…。 炎夏『ねぇ、"お願い"と"命令"の違いぐらいブルドックでも分かるわよね?』 相変わらず炎夏は人を蔑むような目で男性を見返す。 男性『あの…いい加減俺のこと名前で呼んでくれませんか…?』 ようやく、割とごもっともな要求をした男性。 泣きそうな表情になってきた男性だが、それを見ても炎夏は欝陶しそうに目を細める。
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