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しばらくし、炎夏は考え込むような仕種をする。
炎夏『…名前知らないんだけど。』
男性『はぁぁッ!?俺何回も何回も教えただろ!?…です!』
春馬『いやその敬語は確実にミスってます。』
てゆーか、自分のボディーガード兼マネージャーの名前を覚えてないだなんて…炎夏にとってこの男性はそれほどにも興味ないのか…。
そして気を取り直すように男性は咳ばらいし、炎夏を含め俺達に向かい合う。
男性『南雲 颯です。警視総監からの期待に応えるべく、頑張りたいと思います!』
と自己紹介をし、男性──颯さん実に奇麗に敬礼をする。
しかしながら、この人顔面カッコイイだけじゃなく名前までカッコイイのかよオイ。
炎夏『そんな売れなさそうなホストみたいな名前なわけないでしょ。本名教えなよ。』
颯『本名ですってば!!』
24歳の年上に対してこうも蔑める17歳もなかなかいないだろうな…逞しいわ。
咲『…炎夏さんって二重人格なの…?』
春馬『そう思っといてくれ。間違ってはないし。』
咲への説明は放棄したのだった。
この颯さん、動機が不純なのにやる気だけは満々なんだなぁ…こんな性悪相手に…可哀想…。
炎夏『別にパパもアンタなんかに期待してないって。だから山に帰りなよ。』
颯『そんなわけないですよ!新米であるハズの俺にこんな重大な仕事任せてくれましたし!』
颯さんは意味なくガッツポーズを作るが、言ってることは超ポジティブ。
こういう幸せな頭してたら人生楽しいだろなぁ。
颯『そりゃ俺だって刑事だし、もっとドラマみたいな事件を捜査したかったです!でもこれはある意味刑事としての期待を──』
炎夏『黙れ犬。期待されるほどの実力ないクセに。』
わお、なんて辛い罵倒なんだろう。
けど確かに、颯さんはただ厄介事を押し付けられただけに感じるけど…。
颯『ちょっと待て…待ってくださいよ。俺実力はありますよ。』
炎夏の罵倒にもくじけなかった颯さんが、ここにきて炎夏に反論を。
が、そんなの無視して炎夏は穏やかな顔に切り替えて咲へ向く。
炎夏『そういえば咲さん、お時間は大丈夫なのですか?』
咲『…あ、良かった…元に戻った…。』
いや元がヤバい人なんだよ炎夏さんは。
咲は携帯で時間を確かめ、普通にスルーされた颯さんは気まずそうに咳ばらい。
颯『…俺、嬢を護るだけの実力はありますよ!』
咲『じゃあ私は学校があるから、炎夏さん、南雲さん、ハルをお願いします。』
お願いしてどうすんの君。
咲はお母さん的ノリで頭を下げ、それにより二度もスルーされた颯さんはさらに気まずそうな表情になる。
咲『行ってくるねハル。』
春馬『え?あ…おう。』
咲はそう言い、そのまま俺達に背を向け歩いて行ってしまった。
…いつか炎夏が言っていた、「咲は俺を信頼している」とかどうとかの話を思い出し、今ならそれが…分かる気がする。
咲は、本当に俺を信頼してくれているんだ。
なら俺は、当然その信頼を裏切ってはいけない。
颯『…俺ッ、嬢を護るだけの実力はありますよぉ!!』
めげない颯さんだった。
てゆーかせっかく俺がいい感じに主人公らしい心情語ってんのに邪魔すんなよクソ。
炎夏『確かぁ~~よく吠える犬ってさぁ~~』
颯『信じてくださいよぉぉ!?』
なんか可哀相になってきた。
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