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俺もびびっていたが帰ってはサブすぎるので、なんとかなだめすかして奥にある沢を越えホテルの裏口に侵入した。
敷地から、1ヵ所開いていた窓を乗り越えて中に入ると部屋は電話機やら空き缶やら様々なゴミが散乱していた。
風呂場やトイレなど、汚れてはいたが使っていたそのままの感じだ。
部屋から廊下にでると剥がれた壁や捲くれあがった絨毯でいかにもな廃屋に仕上がっている。
懐中電灯が2個しかないのでなるべく離れない様にしながら各個室やトイレなどの写真をとりまくった。
特に台所は用具がまるまる残っていて、帳簿とかもあった。
噂だがここはオーナーが気が狂って潰れたという。
1階を探索して少し気が大きくなったので2階へ続く階段を見つけて、のぼった。
2階のフロアについて、噂の3階へそのまま行こうかと話していた時だ。
急に静寂のなかに電話のベルが鳴り響いた。
3階の方からだ。
女の子が悲鳴をあげてしまった。
連鎖するように動揺が広がって何人か下へ駆け降りた。
「落ちつけ。落ちつけって」
最悪だ。パニックはよけいな事故を起こす。
俺は上がろうか降りようか逡巡したが、ジリリリリリという気味の悪い音は心臓に悪い。
「走るな。ゆっくり降りろよ」
と保護者の気分で言ったが、懐中電灯を持っている二人はすでに駆け降りてしまっている。
暗闇がすうっと下りてきて、ぞっとしたので俺も慌てて走った。
広くなっている1階のロビーあたりで皆は固まっていた。
俺が着いたときに、ふっ、と電話は止まった。
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