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周囲からは避けられ、鬱陶しがられ恐怖の対象として見られる高槻だが、そんな彼と俺は中学三年間同じクラスであった。
俺の記憶を信じるならば少なくとも一年生のときの彼はまだ今ほど不良をしてはいなかったし、ちょっと悪ぶっているが明るく活発で、いつでもクラスの中心にいる様な少年だったはずだ。
しかし、その彼もいつの間にか変わってしまっていた。
今ではかつての太陽の様な笑顔を見せる事は無く、その鋭い眼光を常にぎらつかせ、獲物を求める獣の様に放浪している。
だがそんな彼だが、不思議な事に学校には毎日通っていた。
いつも教室の窓際後方一番目の席に座って、眠っているか本を読んでいるかだった。
一度、彼が読んでいたのが俺の好きな漫画だったので勇気を振り絞り声を掛けてみたことがある。
彼はその鋭い目で俺を睨みつけ、適当にあしらっただけであった。
だが、その漫画が好きなのか、と言う俺の問いにはきちんと答えてくれた。
――ああ。
一言だけであったが、確かに答えた。
その後も俺の質問に対し、適当に返答をし続けた。
正直一蹴されることを覚悟している俺にとっては予想外の反応だった。
それ以降、俺は彼に対する認識を改める事にした。
確かに態度は粗暴だし、授業はほとんど眠っているが、彼は根っこではそこまで悪い人物ではないのではないか。
根拠は無い。
ただなんとなく、そう思うようになった。
そんな彼とも、中学校を卒業した今、会う事も無いだろうと考えていた。
だが、俺は彼と再会した。
それは、春休み中の、天気がいいある日の事であった。
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