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――殺してやる
今日もまた、あの声がきこえてくる。
数ヶ月前から、時々きこえてきた。
最近は一日中、あの声がする。
外に出ても、家にいても、どこにいようが、何をしようが、あの声が常に絡み付いてくる。
――殺してやる
あの声はどこからきこえてくるのだろう?
なんで私が殺されなければいけないのだろう?
――殺してやる
――殺してやる
――殺してやる
あの声のせいで、私は家から出られなくなった。
部屋から一歩も出たくない。
真っ暗な部屋の片隅で、じっとうずくまる。
それでもやっぱり、まだきこえる。
だれ? いったい、だれなの?
――殺してやる
どこからきこえるの?
――殺してやる
いったい私が何をしたっていうのよ!?
――殺してやる
目と目が合った。
ついに私は声の正体を突き止めたのだ。
私はポケットの中のバタフライナイフを握りしめた。
そして。
手応えがあった。
確かな手応えが。
これは正当防衛なんだ。
私は悪くない。
震える手を握りしめながら、私はなぜか笑っていた。
これでゆっくり眠れる、と。
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