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ニュースをもう少し良く聞こうと、翼はリモコンでテレビの音量をあげる。
ちょうどその時、テーブルの隅に置いていた翼の携帯が鳴った。
着信メロディを流しながら、テーブルの上で暴れる白い携帯を取って開く。
電話の相手はアキラだ。
『翼? ニュース見た?』
電話口越しに、アキラの柔和な声が聞こえてくる。
「あぁ、今見てるよ。サラリーマンが行方不明になったってヤツだろ?」
『そうそう、それ。いや~、南乃宮も物騒になったね』
「大丈夫、俺は慶太がいる時点で物騒だと思ってたから」
電話の向こうで、アキラが吹き出した音が聞こえた。
『も~、やめろよな、そんな不意討ち。じゃ、戸締まりとか気をつけてな。ばい』
「おう、気をつけとく。おやすみ」
翼が電話を切ると、1分もなかった通話時間の間に、メールが1通届いていた。
差出人は慶太で、内容は1行。
『戸締まり気をつけとけよ』
2人とも、1人暮らしをしている翼を心配してくれているのだろう。友人たちの気遣いに、翼は自然と顔が綻ぶのを感じていた。
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