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「いきなりだけど、翼って彼女とかいないの?」
ソファーに寝そべってマンガを読んでいた少年は、マンガから目をあげるといきなりそう言った。
「本当にいきなりだな。なんだよ?」
答えたのは、右手にダーツの矢を持ち、的に向かって狙いをつけていた少年だ。
その少年は右手を軽く前後に揺らすと―――投擲。
ヒュッ、と一瞬風切り音をたてた矢は、寸分違わす、壁にかかった的のど真ん中に突き刺さった。
「いやぁ、翼って見てくれはけっこう良い感じじゃん?夏前に浮いた話はないかなぁ~って思ってさ」
マンガの少年はソファーから起き上がると、本棚から次の巻を取り出す。その動作はなんとなく猫っぽい。
「ガハハ、翼に彼女なんてできっこねぇだろ。俺にもいねぇのによ」
そう言ったのは、パイプ椅子に後ろ向きに座った、えらくガタイのいい少年だ。
彼は椅子から立ち上がると、部屋の中央にある、机の上のケースからダーツの矢を取り出し、最初の少年のように狙いをつける。
が。
放った矢は的の端に弾かれ、むなしく床に突き刺さった。
「相変わらずヘタクソ」
最初にダーツを投げた少年は、笑いながら冗談まじりにそう言った。
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