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彼らが乗る白いセダンは、南乃宮市を南北に走る国道を、南へと抜けていた。
傾きかけた日が窓から射し込み、後部座席に座る少女の顔を赤く照らした。
少し赤みを帯びた頬。後ろで髪をまとめたポニーテール。顔つきはシャープだが、軽く垂れた目のせいか、どこからか天然そうな雰囲気がただよっている。
その少女は膝の上に、いかにも大事そうに竹刀袋を置いていた。
彼女の目線が窓の外を漂う。
さっきすれ違った3人組は、この街の高校生だろうか?
「親島さん、南乃宮市にはどんな学校があるんですか?」
運転しているのは、20代後半のスーツ姿の男性。助手席には、頭を剃りあげた年配の男性が、運転手と同じようなスーツで座っている。
少女が話しかけたのは、助手席に座っている方だ。
「まぁいくつかあるが、お前が行くのは市立の学校だ。毛並みは悪くないところだから、心配はいらんぞ」
親島と呼ばれた男は、首だけで後ろを振り返るとそう答えた。
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