馬頭

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 可哀想に、奴はもう目から涙が溢れんばかり。湯飲みの茶を酒呷るごとく飲み干すと、一際甲高い声を絞り出した。 「『そんな訳ないでしょ。私が合神したのは、もう一人の愛染なの。それを不動様に、どう伝えようかと思って』!」  もう我慢の限界だ、馬頭は湯飲みを握りしめたまま、童子のように声を張り上げて泣きだした…… 「ま、まあ、とりあえず酒でも飲んで早く寝ろ、な」  しかと聞き出したい点はあるものの、これ以上奴に語れと言うのは無理な話だ。  俺は仕方なしに、とっておきの酒瓶を一本持たせ、宥めすかして送り出したのだった――
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