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童子達も出払い、静まり返った本殿。俺は愛染に書状を飛ばし、こちらに来るよう呼び出した。
酒の準備も整わぬうちに、戸口に人影が立つ。
「愛染、参りました」
「早いな、馬頭並だ。まだ肴もできとらん」
「手伝いましょうか」
自慢ではないが、日頃食べ盛りの童子らを養っているから、料理には自信がある。
俺は調理場に寄って来た愛染を軽く手であしらった。
「こっちは任せろ。お前最近、孔雀に楽の音など習っているそうじゃないか。そこにある竪琴でも弾いて」
「この琴、童子達は?」
やれやれ、こんな話をしている間に肴ができあがってしまった。
「ああ、童子らは烏枢沙摩先生引率で下界に遠足だ」
「あー、悪心浄化の補佐ですね」
酒の相手に相応しくない女神だ――という言葉は呑み込み、皿をこれまた色気もない文机に並べる。
とりあえず料理と酒でもてなし、程よく腹くちくなったところで、俺は本題を切り出した。
「なあ愛染、」
「合神のこと?」
「察しがいいな。地蔵界からのお達しは絶対だ、断るのは容易じゃないぞ」
少したたみかけると、愛染は俯いてしまった。急に罪悪感に襲われる。
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