両頭愛染

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 ――こうなってみて、ようやく奴の云わんとすることを理解した……  今、俺の体の上には、一面二臂になった愛染が、安らかな寝息を立てている。 「阿修羅……お前、愛染のこと甘やかし過ぎ、じゃなくて、自分の願望とすり替えただろ」 「そう妬くな。お前と私は無二の親友じゃないか」  奴は今、俺の横面として、ちゃっかり収まっていやがる。 「絶対、正面とは替わってやらないから」 「そう怒るな。お前の初恋の相手と交わったとでも」 「いくら同じ阿修羅族でも、そんなこと思えるかよバカヤロウ」  俺の心、友知らず。とはいえ、すんなりあっさり合神できてしまったあたり、俺もどうかしているに違いない……  気を取り直し、眠る愛染をそっと抱えて、寝室へ――こんな俺の姿を見たら、彼女は何と言うだろうか。  彼女が愛した三面六臂とは程遠いが、まあそこはご愛嬌、といったところか。  しかし、今もって複雑な心境だ。愛染のこと、愛らしいとは思っても、それが愛しいという気持ちにまでは、なったことすらなかったのに。  今は、とても愛しいと思う。阿修羅の想いが反映しているのか――
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