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「馬頭(ばとう)、貴様いつからそこに」
「いつからってそうですね、不動様がぼやき始める少し前から」
人をくったような生意気な面に、思わず軽く蹴りを入れる。馬頭は思いっきりやられたごとく大仰にひっくり返った。
「いったぁ! 横暴です不動様。僕はただ地蔵界からのお達しを言付けに参っただけなのに」
「伝達係は要件だけ伝えればよい。この減らず口が」
上目遣いに見上げる奴から目をそらし、腕を組んで話を促す。
馬頭は名の通り一族一足が早い故に、ここ明王界より更に上層空である地蔵界からの伝達係に任命していた。
刀利天にいる頃は狭い世界しか知らずにいたが、今は、更に高みにいる神々に使役される身の上となった――
少しは偉くなったのかもしれないが、正直、その辺りの理解は皆無だ。
「―――とのことです、って、不動様? 聞いてます?」
「んん。下界に下り、悪心浄化せよとのお達しだな。烏枢沙摩(うすさま)を頭にして、童子達を連れて行くよう伝えてくれ」
「分かりました。……それから……」
「何だ、まだあるのか」
馬頭は意味ありげに言いよどみ、また、上目遣いで俺を見上げた。
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