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「愛染様に、合神(ごうしん)を促すよう……お達しが来ております」
馬頭の奴、年頃が近い愛染にご執心のようだ。奴は上目遣いの瞳を伏せると、頬を赤らめた。
こういった表情を見ると、ついつい気がゆるんでしまう。
憎まれ口を叩いても本当に憎まれずに済んでいるのは、奴の天分なのだろう。しかし、甘やかすとつけあがるのは頂けない。
「そうか。ならば俺が行って伝えよう。お前は烏枢沙摩に急いで伝達して来い」
「あ、愛染様にも僕」
少し無理をしてでも、有無をいわせない形相を作り、烏枢沙摩の館を指さしてやる。
馬頭はがっくり肩を落として、指さした方角に向かって行った。
「やれやれ」
分かり易い性格というのも難がある。一方、これから向かう愛染は――馬頭とは対照的で掴み処がない。
俺は身支度をし直しながら、愛染の合神に相応しい相手を考えた。
愛染はその名が表す通り、誰からも好かれる心遣いの持ち主。合神する相手側からすれば、申し分のない女神でもある。
ただ、問題は――誰にでも優しく尽くしてしまう彼女が、ただ一人の相手に絞ることなど、できるのか――という事。
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