馬頭

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 愛染、転輪王を打ち破った女傑でありながら、今はそのような闘神ぶりは欠片も見いだせない。  とても女神らしく、たおやかで美しい……長に対するあの態度がなければ、俺だって最高の女神と認めたいところだ。  しかし、それなりな年頃にもかかわらず、合神に及び腰とは。  他の女神へのお達しなら、彼女らはきっと血眼で男神を物色しただろう。 「解らんな、女という者は」 「全くです……」  突然の相づちに、俺は危うく飛び上がりそうになった。また、内面に深く向かいすぎていたようだ。  背後には、輪をかけて落ち込んだ様子の馬頭が立っていた。 「その調子、ふられたな」 「う……烏枢沙摩様が、制多迦(せいたか)童子が見当たらぬと仰ってました」  馬頭は力無く膝をつき、報告だけ口にして、ふらふらと立ち上がる。  すっかり打ちのめされている……後で話くらいは聞いてやるか。 「あのやんちゃ者、俺の言いつけを守っているなら、書庫で書き取りをしているはずだ。馬頭、お前もついて来い。制多迦を烏枢沙摩に引き渡したら、ゆっくり話を聞いてやる」
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