馬頭

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 制多迦を捕まえ、烏枢沙摩の館に連れて行き、やっと話を聞く余裕ができたのは、約半時も過ぎた後――  馬頭は泣き出さんばかりの情けない顔で語り始めた。 「僕、烏枢沙摩様の館に行った後、不動様と入れ違いくらいで愛染の所に行ったんです」  予想通りの展開だ……俺は茶を湯飲みに注ぎ足しながら、 「ほう、それで?」 と相づちを打った。馬頭は湯飲みに少し口を付けただけで、また語り出す。 「いつも遠回しに誘っては断られてたから、今日は直接『愛染は合神する伴侶は決めた?』って聞いたんですよ」 「お前、俺と入れ違いで、そんなこと聞きに行ったのか」  馬頭は俺と目を合わせようとせず、湯飲みを見つめたまま動かない。 「……そしたら彼女、『実はね、私、ここに来る前に――もう合神しているの』って」  馬頭は声真似だか辛いのかで、うわずった声を張り上げた。 「な……に、もう合神しているのか?」  俺まで、雷にでも触れたような気分になる。そんな話は初耳だ。 「で?」 「僕、思わず問い詰めたんです『一体誰だよ、昔君が匿われてた迦楼羅(かるら)族の誰か? まさか帝釈天じゃないよね』……」
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