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『――ここでこの方程式を…‥』
数学の時間。
俺は窓からの景色をぼ~っと眺めていた。
授業の内容なんて全く耳に入らなくて。
『…葉月…』
ただ、もういない愛しい人の事だけをずっと考えてた。
『……智也くん』
『…?』
完全にトリップしてた俺は、
誰かの呼ぶ声で目が覚めた。
何十分かぶりに窓から視線を反らせば…
そこにはもう先生の姿はなくて。
代わりにこちらを悲しげに見つめる葉月の親友、優奈の姿。
『…もう授業、終わったよ?』
『…あぁ』
それだけ呟いて、がたんと席を立った。
『っ、待って』
すかさず優奈が俺の腕を掴む。
『……なに?』
『どこ行くの?』
『……トイレ、だけど?』
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