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『――そっか…』
安心したようにため息をついた優奈の腕がするりとすべり落ちる。
『…心配しなくても、もう馬鹿な真似はしねぇから』
そんな優奈に少し微笑って言う。
すると優奈はぷく、と頬を膨らませた。
『わかんないじゃん。
智也くんずっと死んだような目してるんだもんっ…』
『はは、
死んでねー』
『目が死んでるのっ』
『はいはい』
優奈の頭にぽんと手を乗せ、軽くあしらう。
そしてそのまま教室の出口へと足を運ぼうとしたら…
『あ、智也くん!』
慌てたように名前を呼ばれ。
『漏れるから、話なら後でな』
それすらも軽くあしらって、俺は教室から出た。
――数日前。
葉月がいなくなった日。
俺はそのまま自分の命を絶とうとした。
だって、葉月がいないと生きていけねぇんだから。
…それが当たり前だと思ったんだ。
そしたら、直と優奈に全力で止められた。
止められたと思ったら、大声で怒鳴られて…
――そこで、初めて自分が間違ってた事に気づいたんだ。
幸せにならなくちゃ。
幸せになるんだ。
…葉月の分まで。
俺達の桜の下でそう心に誓った。
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