吹雪は涙

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「…なー」 「んー」 千尋の呼びかけに、やはりやる気のなさそうな声を出す妹…名前は藤原千草(ふじわらちぐさ)。 「そろそろ年越しそば作んないか…」 「別に年越してからで良くない~…?」 「ってなるとたぶんめんどくさいからって作んないで終わるぞ…かき揚げの賞味期限危なそうだから、食わんと…」 「あー…言えてる…」 ~♪~ …ストーブが…無慈悲とも言える声を上げた。 “運転延長”…つまり“最後に俺(ストーブ)に消息知らせてから3時間経ったから安全の為消えるぜ、もし延長したいってんなら寒いだろうが押せよ”ボタンが点滅した。 「…」 「ヒロ」 千尋は千草に“ち”を略されて“ひろ”で呼ばれる。 「まだいける」 運転延長は“消えるよー”予告を3回お知らせしてくれる。 数分後、また同じ音。 「ヒロぉ」 「まだいける」 数分後。また音が鳴る、が… 「…ぴょあぁあああああっ!」 それは無慈悲どころではない、言わば死の宣告。 …“給油”サイン。 当然だが、寒い寒い場所に置いてある灯油缶の所まで行くのには、相当の決意が必要である。 「……」 「……」 “灯油よこせ”と言っているストーブは、抗議のようにその勢いを弱めた。 しかももうすぐ3時間延長の3回目が必ず鳴る。 「…」 「…」 千尋と千草が目を合わせた。
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