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ぱち、と一回。
思い出したように目を瞬かす。
「 あれ―― 」
少女は自分の目を疑った。
確かにここに花畑があって、その真ん中に透明な歌声が流れていたはずなのに。
今、眼前に広がるのは、広大な芝生が続く丘だった。
歌声と一緒に森まで消えた。
「 どうして、 」
「 どうしてかしら? 」
背後で声がした。
首筋に、冷たい何かが絡む。
悲鳴を上げそうになった。
「 貴女、私に何か用があって? 」
静かにそう問う声音は、あの歌声と同じ響きをしていた。
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