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伸びた手は首を絞めるように絡み、指先は巻き付くように首筋を撫でた。
まるで焦らすようなゆっくりとした動きは、その度に少女の背中をぞくりと震わせる。
喉が竦んで、少女は何も言えなくなってしまった。
「 ……もう、いいわ 」
人形遊びに飽きてしまった子供のような、そんな口振り。
死人のように白く冷たい手が喉から離れる。
緊張の糸が切れた少女はその途端、へたへたと地面に崩れ落ちた。
恐る恐る後ろを見れば、そこには誰もいない。
首筋にそっと触れてみると、まだひんやりと冷たい気がした。
「 なんだったの、あれ…… 」
へたり込んだ少女の視線は真下に向いていた。
自分の下半身と芝生しか無いはずの視界の片隅に、一輪の花が映り込む。
驚いて顔を上げた。
目の前に、あの娘がいた。
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