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思えば少女の服装は、こんな場所を探索するに相応しいものではなかった。
胸元は広めに開いていて、幅のある襟の下を赤い布が通されている上衣。
その下は、襟と同色の布が末広がりになるよう巻かれているという、とても簡単な構造だった。
しかしこの白と紺を基調とした服は、やけに体に馴染んでいる。
そのことに奇妙な感覚を覚えながら、少女はあまり、深く考えないように努めた。
木々と格闘しながら茂みを掻き分け歩いてしばらく、鬱蒼とした空間に、ふと光が射す。
あと少し行った先から、光が漏れている。それはこの森の終わりでもあった。
ふと少女の顔に笑みが浮かぶ。
この森を抜けた場所に歌声の持ち主がいると、希望にも似た確信があったからだ。
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