(★)愛しているのは貴方だけ

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  クリスマス…… 元々は神の誕生を祝う日だったが 時代とともに慣習は薄れ、 いまや七夕と並ぶ 恋人たちの逢瀬の日である。 カラフルなイルミネーションに彩られ、 楽しい音楽が流れ、笑顔が溢れる街に、 待ちぼうけの男が一人……。 「寒……っ!」 うー、とかあぁー、とか 意味のない声を出して寒さを紛らわそうと しているが、効果は殆どない。 「くそ寒ぃ……っ! ユーリ……ホントに来んのか?」 ――――…… 遡ること4時間前…… 「なぁサン。今日は何の日か、 お前知ってるか?」 インターホンも押さずに入ってきた ユーリに驚いたが、いつもの事だと思い オレは食べかけのラーメンをすすった。 二人っきりの時は名前で呼べって 言ってるのにユーリはなかなか 呼んでくれない。 男同士、名前で呼ぶことがそんなに 恥ずかしいのか? 「んなもんどーだって良いんだよ。 今日は何の日かって聞いてんだ」 「どーでもって……ひでぇ……。」 「……もう一度だけ聞く。 今日は何の日だ?」 いい加減答えろと苛立ちを含ませた声で 脅されると、思わず肩が跳ねる。 綺麗な顔して意外とやること おっかないからなぁ…… 「今日って……クリスマス、か?」 12月25日。 確かそうだったはずだ。 キリストやら聖誕祭やらに興味は無いが、 甘いもんが食えるのは有難い。 イメージじゃない? 放っとけ! 「正解。というわけで出掛けるぞ」 「どこに?」 なにがわけなのかさっぱり解らず、 反射的に聞き返してみた。 「んなこと……言わせんなよ。 ……お前と、二人っきりで で、デート…が、したいんだよ、太陽」 照れながら頬を染めて微笑む ユーリは、間違いなく地上の天使だった。  
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