(★)愛しているのは貴方だけ

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  ――――…… 「つーかさ、結局どこ行くんだよ?」 昼間なのにやけに冷え込む街を歩きながら ユーリに聞いてみた。 「デートなんだから、どこでもいいだろ。 それとも、行きたいところでも?」 特にこれと言って目的はないんだな、と 判断したオレは「別に。」と答えた。 適当に街を歩きながらアレがどうだの コレはあーだの話していると、 前方に不穏な影が見えた。 「ユーリ、横路から抜けようぜ」 「は?なん「あーっ!!筋肉だるま!」 「ちっ。見つかったか」 高さのあるヒール靴を高らかに鳴らし、 近づいてきた女はブロンドの髪を 揺らしながらキッとオレを睨みつけた。 「貴方、一体何をしているのかしら?」 射殺さんばかりに睨みつけてくる女は オレの後ろに立つユーリを見ると、 一転して喜びの表情に変わった。 「あら、ユーリじゃない。 今日はお買い物かしら?」 上機嫌で話しかける彼女にユーリは、 やぁ、と笑い掛けた。 「ミス.ジェニファ、ご機嫌麗しゅう。 ……とても、重そうな荷物だね」 両腕に所狭しと掛けられた紙袋が 本日の収穫を物語っていた。 高級洋服ブランドの袋にアクセサリー、 クリスマス限定の小物が入った袋に 大きなブーツの箱。 かと思えば庶民の味方、 大手スーパーマーケットの袋も ちらほらと見える。 「前から欲しかった《アイ.ビー》の ブーツが買えたの! 《メドレー》のクリスマスオルゴールに 《ヴェネッツァ》のファーコートと アンサンブルにワンピースでしょ? 《シェロン・ソニ・マーマ》の香水に 《ナンタン》の限定ネックレス、 それに……」 次から次へ出てくる高級ブランドの名前に 唖然としながらスーパーの袋に目をやると 『タイムセール』や『半額割引』という 文字が見えた。 抜け目ない。 「ところで」 ひとしきり喋り終えた彼女は オレに向き直って殺意を込めて呟いた。 「なんで貴方がユーリと一緒なのよ」 ゾワッと鳥肌が立った。 女って、怖い。 「ねぇユーリ、わたしも買い物に 付き合わせてもらって良いかしら?」 せっかく会ったんたんだし、 今日は仕事もないし。 ダメかしら? しおらしく目を潤ませて見つめる様は、 肉食系女子の狩りを見ているようだ。  
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