(★)愛しているのは貴方だけ

5/25

110人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
  ――――…… ブティックやサロンなど、 オレには一生縁の無さそうなお洒落な店が 並ぶ通りの側、程々に人が通る細い路地に オレは連れてこられた。 「んだよ用事って……」 「わかりきったこと聞かないで」 やっぱり……。 またユーリを渡せだの 別れろだの言うつもりか? 「何回もいうけど、 ユーリはオレの「貸しなさい」はぁ?」 貸せって何を? 「貴方の携帯、貸しなさい」 「……嫌な予感がするから嫌だ」 どうせオレになりすまして ユーリに連絡とるつもりだろ。 そうはさせるか! 「何を勘違いしてるのか知らないけど、 貴方が思ってるような事じゃないわ。 アドレス、教えてほしいのよ」 「アドレス?オレの?」 「自惚れんじゃないわよ」 ですよねー。 「断る。ユーリと連絡とらせてたまるか」 ケッと顔を歪ませると あら、と意外そうな声が返ってきた。 「ユーリは貴方のものなんでしょう? だったら、わたしが連絡をとっても なんの心配もないじゃない。 それとも…… ユーリを盗られそうで怖い?」 カチンときた。 「誰が誰に盗られるって? 恋する男のガードの固さを舐めんなよ」 「貴方が一方的に恋してるだけでしょ? 彼はとても魅力的だものね。 でもね、まるで彼が力にものをいわせる 貴方に恋をしてるような言い方は よしてちょうだい」 「誰が力にものをいわせるだって? オレの身体に、無駄な筋肉は一切無い!」 「筋肉筋肉って、ほんと暑苦しいわね! 貴方なんかプロテインと結婚すれば いいじゃない!!」 「なんだと?!」 結局、ハブとマングース、 犬と猿の仲は相容れない宿命のようだ。 「わかった。お前には一切ユーリの情報は やらない。一切な!」 「なんですって?!」 信じられないと言った表情で オレをみるジェニファは、 近くにあった石を投げつけてきた。 「痛てっ!ちょ、ちょ、おま、 石、石はやめ……っ!」 「うるさいうるさいうるさい! 気にくわないわ、貴方の全てが! なんで貴方なの、よ……きゃっ?!」 次の石を拾おうとした時、 手荷物の重さに耐えきれなかった ジェニファがバランスを崩して 倒れこんできた。 「危ない!」 思わず抱き留めてしまった。 漂ってきた甘いコロンの香りが鼻を擽る。 やっぱりこいつも女なんだな……。  
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加