(★)愛しているのは貴方だけ

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  そう言って数歩進んだところで 立ち止まり、急に此方へ帰って来た。 さっきの表情が嘘みたいに満面の笑みだ。 嫌な予感がする。 「な……なんだよ……?」 「良いこと思いついたの。 貴方とわたしでハント勝負しましょ? もちろん、ターゲットはユーリよ」 ……やっぱり。 「ルールは簡単よ。 先にユーリを見つけて広場のツリー前に 連れて来れた方が勝ち。 近くでユーリを待つのも有りよ。 通るかどうかは運次第だけどね。 だけど……」 そこで彼女は言葉を句切った。 「だけど……なんだよ?」 「貴方はユーリに連絡を取っちゃだめ」 「はぁ?!」 何を言い出すんだコイツ! 「信じられないって顔ね。 でも当然のことじゃなくって? わたしはユーリの連絡先を知らないもの。 貴方に味方するルールなんて わたしが作ると思って? 勝負するには、フェアじゃないとね」 そう言うとジェニファは 今度こそ足早に去っていった。 「言うだけ言ってコレかよ……。」 路地に一人残されたオレは途方に暮れた。 正直、ユーリが行きそうな所なんて まったく思いつかない。 仕事で着るスーツを仕立てるために 会員制のブランドショップへ 足を運ぶかと思えば、部屋着の服は 目についた物を買う。 オレみたいな服装では階段すら昇れない 敷居の高い一流の店に外食すると思えば、 スーパーでおばちゃんたちに紛れて 安売りの惣菜や広告商品を買ってくる。 ユーリの考えてることは解らない。 オレなんかが逆立ちしたって解らない事を ユーリはいつも考えている。 オレが考えそうな事は ユーリはとっくに承知してて、 いつも馬鹿だって鼻で笑われる。 その憎たらしい顔も好きなんだけど。 誤解された事をどうやって説明しようか、 いやその前にユーリはどこに居るのか。 誤解を解いたら何処へ行こうか、 いやその前に許してくれるだろうか? いろんな事が頭の中にぐるぐる渦巻いて すでに脳内はパンク寸前だ。 「とりあえず、ここから動くか……」 それが最優先事項だ。  
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