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――――……
買い物に付き合わされているのか、
はたまた何処かで話しこんでいるのか。
皆目見当もつかないが
とりあえずしらみ潰しに探し回る。
立ち並ぶ店の中や信号待ちの人だかり、
見落としがちな狭い路地を
いくつか見て回っていた時、
俺の数m前に石が飛んできた。
遅れて二つ、三つと飛んでくる石に
嫌な予感がし、もしやあの二人がまた
喧嘩しているのではと急いで駆けつける。
「サン?」
遠慮がちに声を掛けるとそこには。
不安げな表情で寄り添うジェニファと、
それを優しく抱き締めるサンがいた。
なん、で……。
……なんで、抱き合ってるんだ?
頭の中が真っ白になるってのは
こういうことか。
でも、目の前は真っ暗だ……。
「……サン…取り込み中だったか……。
その、ちょっと……買い物、して、くる」
自分でも何言ってるか理解出来ていない。
ただ声が冷めているのはわかった。
だいたい、買い物ってなんだ。
買うもんなんてないだろ?
オレは、サンと……
サン、と…………
気付いたら俺は走り出していた。
行き先があるわけじゃない。
ただ二人を見ていられなかった。
サンがジェニファを抱き締めていた。
俺だけだと、馬鹿の一つ覚えのように
愛していると繰り返していた彼奴が。
俺以外を見ていたなんて……っ!
「くそっ……くそぉっ……!」
視界が滲みはじめた。
涙腺が弛んだのだろう。
人目など気にせずに、泣き喚きたかった。
胸の内に溜まるどす黒く粘度の高い塊を、
急速に膨れ上がる不快な嘔吐感を、
どこへでもいいから吐き出したかった。
俺が冷たくあしらってきたから?
セフレだなんて言って応えなかったから?
愛想尽かして……乗り換えたのか?
「うっ……くっ…………うぅ……っ!」
涙が止まらない。
こんな気持ちは初めてだ。
嫉妬なんて言葉では片付けられない、
灼けつくような苦い衝動。
身体中から溶け出て纏わりつく鎖のような
ソレは、少しずつ俺を蝕み始めた。
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