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epilogue
崖の上にそびえ立つ古い城。門や外壁はその長さを語るように苔を生やしている。
連立する塔の中で一番大きく、そして高い塔の屋上に一人の男の姿があった。
黒いローブを羽織り、肌は青白く正気が籠もっているとは思えない。
彼は何かを呻きながら壁に爪を立てていた。
「血が、、、血が欲しい!」
爪が壁に飾ってある旗の織物を引き裂く。
それでも呻くのを止めないかと思うとフラフラとワイン棚の方に歩きだし、ボトルを一本取り出した。
荒々しくコルクを口で抜き取り吐き捨てると、そのまま仰いで一気に飲み干した。
空になったビンを床に叩きつけ、凄まじい高音が耳をつんざく。
残ったワインの紅色がカーペットに染みを作った。
「血、、、血だ、、、!」
もはやワインの色とも区別をつけられなくなる程、血を欲す彼。
そんな彼からは誰もが恐れて離れていった。
ただ一人の女性を除いて…
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