序章

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面倒くさい。 ばれないように。 そう考えるのも、面倒で仕方がない。 不意に、足が止まった。 自分の足だ。 自分の足が、自分が意図せぬうちに止まる いっそのこと、家に帰るか? 父親と愛人がイチャイチャしてる所に行ってコイツには子供がいる。 なんてばらしてみるか? そうしたら父の怒りが憤慨して、気が済むまで俺を殴り続けるのだろう。 別に俺はそれでも構わないけど。 それもまた違う気がした。 「何やってんだ。俺は」 ふっと笑って、また歩き出そうと足を踏み出す。 「おい。少年」 踏み出した足が地面につく前に 低い声がした。 声変わりも終わった。大人の男の声。 ヤバい…。 補導だ。 そう思った。 逃げるべきだった。 そう思ったのに、俺の身体は後ろを向くために動き出し、すぐに声の主を見つけてしまったのだ。 さっきまで真っ暗だったあたりに 月の光がさした。
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