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声の主は、見覚えのない男だった。
右手にはビニール傘
左手にはコンビニ袋
これは確実に
買い物の帰りだ。
補導員でもなんでもない。
良かった。
ほっと緊張がとける。
「何してるんだ。こんな時間にこんな雨の中。傘もささないで」
男はそう言って、ビニール傘を俺の頭の上によこした。
その傘の柄には、コンビニのシールが貼ってある。
これもコンビニで買ったのか。だとしたら雨は降り始めてまだ間がないのかもしれないな。
「早く家に帰れよ。親御さんが心配するぞ。っつか、風邪引く」
男は、自分が濡れていくのはお構いなしに俺に呼びかける。
「あんたに関係ないだろ。自分がさっさと帰ったらどうだ。おっさん」
トゲのある声で言ってやると、コンビニで買ったらしきビニール傘が男の手から滑り落ちた。
傘は風にあおられてみるみるうちに遠くまでとばされた。
それを見て、俺は風が強かったんだと言うことに始めて気づく。
「おっ…おっ。おっさ。おっさ………」
まるで壊れたラジカセだ。
俺が傘のとんでいった方向を見続けていると、しばらくしてやっとラジカセは直ったらしい。
男の口から意味のわかる言葉が発せられた。
「おっさんて。俺はまだ25だ。バカヤロウ。お兄さんと呼びやがれ」
あ。口の聞き方に気を付けろとか、そう言う事じゃないんだ。
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